法論理とのつながりと緻密さを実現するあてはめの奥義とは??その2
こんにちは!かわしょー吉です。
今回も,前回に引き続き
あてはめのコツ
に関するお話です。
まずは
前回出題した簡易事例について
解説します。
XがVを
ナイフ(刃渡り20センチメートル)で,
腹部と胸部をそれぞれ1回ずつ,
馬乗りになりながら,腕を頭の上から振り下ろして刺した。
このXの行為につき
殺人罪(刑法199条)の構成要件のうち
実行行為性を検討する
というものでしたね。
前提として,
三段論法をしっかり意識しましょう。
実行行為は,
「法益侵害の現実的危険を有する行為」
として定式化されます。
また,殺人罪は
人の生命を保護法益とする具体的危険犯なので
殺人罪の実行行為とは
「人の生命侵害を惹起する
具体的かつ現実的危険を有する行為」
と解されます。
ゆえに
Ⅰ「人の生命侵害を惹起する
具体的かつ現実的危険を有する行為」
→殺人の実行行為
*これは,厳密には→というよりも
=という論理関係です。
ⅡXの行為→
「人の生命侵害を惹起する
具体的かつ現実的危険を有する行為」
したがって
ⅢXの行為→殺人の実行行為
ひとまずは,
規範定立の三段論法の出来上がりです。
先に進みましょう!!
次にあてはめです。
まずは,行為を抽象化して分析します。
その際に,行為の核となる要素を抽出します。
そうすると,
Xが,Vを,ナイフで刺した
ということですね。
こんな感じですね。
その上で
事実要素から3つの連想をしていきます。
その際の思考フレームが
抽象的類型的→具体的個別的
でしたね。
そして,着目すべき基本3ポイントは
内容,性質,程度(量)です。
これに従うと,次の事実要素に
着目することができます。
ナイフ(刃渡り20センチメートル)で,
腹部と胸部をそれぞれ1回ずつ,
馬乗りになりながら,腕を頭の上から振り下ろして刺した。
え!?!?
ほぼ接続詞だけ抜いただけじゃん(笑)
私には,あなたの心の中のそんなツッコミが
聞こえてきます(笑)
しかし
あてはめで差が付く問題では
使える事実は余すことなく使い切る
というのが鉄則です。
さて
よくありがちな例として,
中位・下位答案例を見ていると
「ナイフ」→「凶器」という連想をしたり
「20センチメートル」→「長い」など
より抽象化してしまう
ものが散見されます。
これらは,形容表現ですから
事実に対する評価が
ないとはいえませんが
なぜ,上位答案例と比べて劣位なのか
私なりにその理由を考えてみました。
それは
法的評価としての質が
イマイチなのではないでしょうか。
何がイマイチかといえば
こう考えてみて下さい。
ナイフが「凶器」であることは,間違いありません。
観念的には,ナイフには人の生命を奪う危険を伴う
ということがわかります。
しかし,単に「凶器」であるという評価から,
Vの生命侵害にどのような内容の危険があるのか
その具体性に欠けています。
私の思考フレームからすれば
上記事実要素は,このように連想できます。
「ナイフ」→「切るためのもの」→「身体への裂傷を与える」
「刃渡り20センチメートル」→
「平均的な成人の身体の厚さくらい」→「体内の損傷を与えうる長さ」
「腹部と胸部」→「消化器官や肺,心臓がある」
→「重要な人体の部分」→「損傷には生命の危険」
「馬乗り」で「腕を頭の上から振り下ろす」→「上下の物理力」
→「人の体表を優に突き抜けて奥まで突き刺さる可能性大」
これを規範にあてはめようとすれば
次のようになります。
Xは,Vを刃渡り20センチメートルのナイフで
その腹部及び胸部を突き刺しており,
Vが内臓に裂傷を受けるなどして
生命への具体的危険を伴う行為をしている。
また,Xの行為態様は,
馬乗りになって,頭の上から振りかぶり,
ナイフを振り下ろすというものであるから,
その物理力ゆえに刃が体内の奥まで到達し
実際に内蔵に裂傷を与えるなどして
生命侵害の現実的危険もある
といえる。
したがって,
Xの行為は,Vの生命侵害を惹起する
具体的かつ現実的な危険を有する行為であるといえ
殺人の実行行為にあたる。
いかがでしょうか。
前回の簡易事例の解説は,ここまでです。
あてはめの論理の緻密さは
このようにして鍛えることができます。
何かご質問があれば,コメントをお願いします!!
これまでの内容を踏まえた上で
あなたがもう一歩先の段階のレベルの
答案を書く
そのための+αのテクニックを
今回の内容でまだまだ物足りない
そんなあなただけに
次回!ご紹介します!!
お楽しみに!!