法的三段論法の階層構造??
こんにちは!かわしょー吉です。
今日は
法律家の基本的思考フレームである
法的三段論法
についてです。
初学者のあなたは
この「法的三段論法」を知ってますか?
また
勉強の進んでいるあなたも
どの程度法的三段論法を知り
どのくらい使いこなせていますか?
前提として
極めて簡略化して
三段論法の概念を
おさらいしておきましょう。
三段論法とは,論理学における
演繹的推論の基本的手法として
編み出されたものです。
これは次のようなものです。
【大前提】となる基本命題:A→B
【小前提】の命題:C→A
この2つの前提から,
【結論】C→A→B
このような推論を導くという
ロジックです。
*コトバンクより
例えば
【大前提】:人間は,いつか死ぬ。
【小前提】:かわしょー吉は,人間である。
したがって
【結論】かわしょー吉は,いつか死ぬ。
となります。
法的三段論法は
これを,
法律学における演繹的推論に置き換えた
というものです。
【大前提】:法律要件→法律効果
【小前提】:具体的事実→法律要件
【結論】:具体的事実→法律効果
簡単に言えば
このようになります。
これが
法的三段論法の基礎中の基礎
です。
より具体的な例を使うと,
次のようになります。
刑法第235条 窃盗罪
「他人の財物を窃取した者は,窃盗の罪とし,
十年以下の懲役または五十万円以下の罰金に処する。」
事実:Xが,Vの財布を,ポケットの中から
そっと抜き去り,これを持ち帰った。
【大前提】
他人の財物を窃取した者
→窃盗罪として10年以下の懲役Or
50万円以下の罰金に処する。
【小前提】
(事実)→「他人の財物を窃取した」
【結論】
A君には窃盗罪が成立し
10年以下の懲役Or50万円以下の罰金に処される。
*説明の便宜上,故意(38条1項本文)等の
要件を省いています。
この法的三段論法
実は
今説明してきたことが
全てではありません!
法的三段論法は,
その形を文章表現により
変幻自在に操ることができます。
もっとも,その内容は,
個々人によって
相対的な側面がありますが
今回は
基礎的な理解として
法的三段論法の階層構造
という概念を共有したいと思います。
あなたがこれを知らないままだと
答案を書くときに
文章の読みやすさが,
相対的に低くなります。
具体的に言えば
同じ論証を書いたとしても
法的三段論法の階層構造を意識した
答案と相対化されることで
「論理の飛躍」を指摘され
ほんの
0コンマ数点の僅差で
司法試験合格ラインから
切り落とされる可能性さえあります。
この差は,一見僅差に見えて
凌駕することがおよそ困難なものです。
なぜなら
これを実践している合格者の方々は
さらに高い次元で
順位を競っているからです。
ちなみに
法的三段論法の重要性は
このように指摘されています。
「法律条文の趣旨を踏まえて、その解釈を示し、
具体的な事実関係を当てはめて結論を出すという、
法的三段論法に沿った論述」が求められる。
(平成21年度司法試験行政法採点実感参照)
では,
法的三段論法の階層構造とは何か?
それは
第1段階:条文(法律要件)→法律効果
のみならず
条文→法律効果
この
→の中身に内在する
三段論法のことです。
つまり
第2段階:規範定立の三段論法
・条文の文言→法律要件の趣旨・価値判断
・法律要件(条文・制度)の趣旨・価値判断
→具体的な規範命題
⇒条文の文言→具体的な規範命題(→法律効果)
第3段階:あてはめの三段論法
・法的評価→具体的規範命題
・具体的事実の抽出→法的評価
⇒具体的事実→具体的な規範命題(→法律効果)
【結論】
具体的事実→法律効果
より具体的に説明すると
売主A
第一買主B 第二買主Cという
不動産の二重譲渡の事例でよく出る
民法177条の問題を想定してください。
図はhttp://www.law-ed07.com/cyber-law/minpou/0177.htmlより
【大前提】
「第三者」→「登記」がなければ
当該第三者に権利の取得を
対抗することができない(民法177条参照)。
Ⅰ規範定立の三段論法
・177条の趣旨
→「登記による公示によって
不動産取引の安全」を図る
・「不動産取引の安全保護」という価値判断
→「登記による公示」の欠缺を
主張する正当な利益を有する者を保護。
⇒177条にいう「第三者」とは,
「・・・登記の欠缺を主張する
正当な利益を有する者」
をいう。
【小前提】
Cに関する事実→「第三者」
Ⅱあてはめの三段論法
・「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する」
→「第三者」
・Cに関する事実○○,□□
→「登記の欠缺を主張する正当な利益を有する」
なお,Bは登記なし。
⇒C→「第三者」にあたる。
【結論】
BはCにAから不動産を買い受けたことを
対抗することができない。
このようになります。
では,これと
先ほどの基本形のみを使った場合を
比較してみて下さい。
【大前提】
「第三者」
→登記がない限り,権利を主張できない(177条)。
【小前提】
Cには,○○という事実,□□という事実
→「第三者」
なお,Bは登記なし。
【結論】
Bは,C(第三者)に
Aから譲り受けた
不動産の権利を主張できない。
どちらが
より緻密で,説得力があるでしょうか?
階層構造を意識した
前者の方が,
より分析的で,論理が緻密である
といえます。
他方
後者は,特に
なぜ
Cの○○及び□□という事実から
「第三者である」
という帰結が導かれるのか
釈然としません。
これが論理の飛躍であり
点数の差につながるのです。
いかがでしたか?
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ここでご紹介しておきます。
また,具体的な応用の1つとして
こちらの記事もご覧ください。↓↓↓
次回は,
マネする技術とその効果
についてお話します。